血液1滴、3分間でがん診断ができる。1年以内に臨床応用へ。 だと?

ヌクレオソーム健康・医療

がん診断 血液1滴、3分で 神戸の企業共同開発 1年以内に臨床応用へ

神戸新聞NEXT 6月17日(水)

ヌクレオソーム

ヌクレオソーム

血液中のがんに関連する物質が放つ光をとらえ、がんの有無を診断する手法を、神戸市中央区の医療機器会社「マイテック」昭和大学江東豊洲病院(東京都)などのグループが世界で初めて開発した。わずか1滴の血液を使い、3分以内で診断できるという手軽さが最大の特徴で、1年以内の臨床応用を目指している。(金井恒幸)
初期のがんは腫瘍が小さく画像検査では発見が難しい。また、従来の血液検査ではがんになると増える物質を調べる方法があるが、初期は検出されにくいなどの課題があった。
グループは2013年、マイテックが開発した特殊な金属チップに血液を付着させ、がんが免疫に攻撃されたときに血液中に溶け出る「ヌクレオソーム」という物質を集め、レーザーを当てて検出した量でがんを診断する手法を開発した。
その後、もっと簡便な手法を模索。がん患者と良性腫瘍の患者計20人の血液をこの金属チップに付着させ、紫外線などを当てて蛍光顕微鏡で観察すると、ヌクレオソームが多量にあるがん患者の血液は発光したが、良性腫瘍の患者では発光しないことを突き止めた。20人全員でがんの有無を間違いなく判別できた。ヌクレオソームは初期のがんでも検出できるという。
今回は膵(すい)臓がんと胃がん、大腸がんの3種類で発光を確認。ヌクレオソームは血液以外の体液にも含まれることから、マイテック技術担当の長谷川裕起さん(28)は「たんや尿から、肺がんやぼうこうがんの有無を判断する研究も進めたい。人工多能性幹細胞(iPS細胞)ががん化していないかどうかの検査にも活用できるようにしたい」と話す。
昭和大学江東豊洲病院消化器センターの伊藤寛晃講師は「この診断法は、健康診断の採血の余りを少し活用するだけでできる。離島の人でも画像さえ送れば判定でき、都会と地方の医療格差解消にもつながる」と話す。
研究成果の一部は、英科学誌サイエンティフィック・リポーツ電子版に掲載された。

ヌクレオソームとは、ザックリ言ってしまえばタンパク質とDNAがユニットになった構造。従来からも癌のスクリーニングや早期発見目的で血液検査での腫瘍マーカーと呼ばれる検査がある。腫瘍マーカーはがんの発見のための手軽なスクリーニング検査として活用されてはいるが、実際は前立腺がんのマーカーであるPSA以外の腫瘍マーカーは早期がんで反応するものがほとんどなく、画像診断など他の検査と組み合わせて診断に導くことがほとんどである。このヌクレオソームでの診断で初期の癌が手軽に診断できるとなれば、現状のがん治療の手法と合わせてがん対策への大きな前進になるだろう。マイテックは化学的な手法でナノ粒子と呼ばれる超微細な量子加工技術を開発し、それを使って表面増強ラマン散乱(Surface Enhanced Raman Scattering: SERS)という超高感度な分析手法をこのヌクレオソームを使った診断につなげたという。開発したのが親子で営む小さなベンチャー企業であることも、常に政治と組んで利権をむさぼる巨大製薬メーカーと違い、社会的な意味も大きいだろう。先日の線虫による診断といいこういう安価で簡便な検査があまねく普及することで弱者の命も救われることになるとすれば、ますますけっこうだと思う。くれぐれも利だけに走らず、是非早期の実用化を進めて欲しい。関係ないけどこの会社の場所は、IKEA神戸と神戸動物王国の間ぐらいにある。

>今回のセンサーチップを開発した、神戸の有限会社マイテック