週刊新潮」2014年9月25日号
9月20日から動物愛護週間が始まった。そこでムツゴロウこと、作家の畑正憲氏(79)を思い浮かべた人は少なくないだろう。かつて、ライオンに噛まれた時にも、“このくらいは傷に入りません”と、血を流しながら笑っていたのだから……。8年前、その畑氏は“王国”破綻で巨額の負債を抱えこんだ。今、どこで何をしているのか。
東京都あきる野市に「東京ムツゴロウ動物王国」がオープンしたのは2004年のことだった。当初、年間来園者を30万人と見込んでいたが、蓋を開ければ半数にも満たない約12万人という大誤算。結果、負債総額約8億円を残してわずか2年で破綻し、個人保証をしていた畑氏も、3億円以上の借金を背負い込む羽目になったのである。
あれから8年――。東京都心の一等地にある築40年以上のマンションを訪ねてみると、颯爽と現れたのは赤紫のポロシャツに紺のスーツ姿の畑氏だった。そこでご本人に近況を聞くと、
「何も変わっていません。毎日、何か仕事があります。今月から中断しますが、BSフジで『ムツゴロウのゆかいな動物図鑑』という番組を週1回やっていた。2、3日前にはテレビ朝日『ナニコレ珍百景』の収録に行ってきました」
テレビの仕事以外にも、大阪にある動物の専門学校で授業をしたり、地方のトークショーなどにも出演しているという。
「一番多いのは、書く仕事ですかね。昨日も、地方紙で連載しているコラムを3回分書きました。僕は、イラストも頼まれるから、それだけ残っちゃったので、今朝描いたばかりです」
■僕は男だから
来年、傘寿を迎えるとは思えないバイタリティーだが、8年前に背負った億単位の借金はどうなったのか。
「あきる野(の動物王国)は、僕がやったものじゃない。なのに、借金が全部こっちに来ちゃった。本当にひどい話。借金の総額は……。他人は色々言うんです。知りもしないくせにね」
返済状況については、
「僕は男だからね。うちにいた人間が作った借金は全部責任を持ちます。それが男としての生きざまだからね。クソみたいな連中が作った借金であろうと、責任を持たなければならない。それだけの話。借金返済は、だいたい目処がつきました。今月くらいでなくなるようです」
8年間かかったとはいえ、自己破産もせずに億単位の借金を1人で返済したというのである。80歳になったら、好きなことをやりたいと公言していた畑氏は、
「あきる野で失敗して馬鹿なことになる前、自分の生活を変えようと思っていました。半年海外に住んで、残りは日本に帰ってくるという生活をね。80歳になったらそういう生活をしたいと思います」
海外でも執筆活動が中心というが、何を書くのか。
「書きたいことはいっぱい残っています。内容は明かせませんが、30年間、毎年1カ月以上取材しているのにまだ1行も書いていないものがある。それは世に残したいというより、書きたいという気持ちが強いのですよね」
傘寿を前に、このバイタリティー。いやはや、頭が下がるばかりだ。
この人の書くものは面白かった。文庫だけどほとんど読んでいると思う。もうすぐ80歳か。何はともあれお元気そうで何よりです。