スター・トレックシリーズのMr.スポック、レナード・ニモイ氏が死去 享年83

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「スター・トレック」Mr.スポック、レナード・ニモイ氏が83歳で死去

映画.com 3月2日(月)

Leonard Nimoyスター・トレック」のMr.スポック役で知られる米俳優で映画監督のレナード・ニモイさんが2月27日米ロサンゼルスの自宅で死去した。83歳だった。ニモイさんは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)のため闘病を続けていた。
ニモイさんは、1931年3月26日、米マサチューセッツ州ボストン生まれ。8歳の頃から地元の劇団で演じるようになり、51年に20歳で映画俳優デビュー。66年に始まったテレビシリーズ「スター・トレック」とその映画版で演じたMr.スポック役で広く愛された。多才で、ミュージシャン、写真家、作家、詩人としても活躍した。遺作は13年の「スター・トレック イントゥ・ダークネス」
ニモイさんの訃報に際して、「スター・トレック」のカーク船長役の盟友ウィリアム・シャトナー(同じ1931年の3月22日生まれ)は、「彼のことを兄弟のように愛していた。我々はみな彼のユーモア、才能、愛情の深さを忘れることはないだろう」との声明を出した。また、オバマ大統領もTwitterを通してその死を悼んだ。

いまさら言うまでもない、SFテレビドラマの金字塔「スタートレックシリーズ」のメイン中のメインキャスト。スタートレックは設定としては「宇宙」であり「未来」つまりSF的な世界観であるが、ドラマの基本的なテーマは人間(宇宙人?)をテーマにしたドラマである。それ故に時代を超えてもそのドラマ性が色あせることはなく、アメリカ製エンターテイメントの力量を感じさせる傑作である。同シリーズは1966年の放映開始以来、5本のドラマ作品、12本の劇場版、1本のアニメ作品が制作され、ハードSF的なものからスペースオペラ的なものまで、様々な内容が制作された。

スタートレックの影響力

『スタートレック』の熱心なファンのことを、トレッキーまたはトレッカーと呼ぶが、アメリカのみならず世界中の宇宙関連事業関係者にもファンが多いと言われる。また、スティーヴン・ホーキングのように、『スタートレック』を自らの講演で引用したり、ゲストとして出演するような著名人もいる。また、『ターミナル』の入国審査官のように、現代のアメリカを舞台とした作品で、登場人物がトレッキーという設定になっていることもある。
トレッキーによる40万通ほどの投書が行われた事で、スペースシャトルのオービタ1号機(ただし大気圏内での滑空飛行試験用の機体)に、当初考えられていた「コンスティテューション」ではなく「エンタープライズ」の名が付けられた。そのお披露目にはキャストなどの関係者が招待されている。なお、『宇宙大作戦』の頃から科学考証をアメリカ航空宇宙局(NASA)に求める事があり、劇場版のクレジットタイトルなどでNASAの名前が出ることがある。
実際の天体にも、小惑星2309番が「ミスター・スポック」(公式には発見者のペットの同名の猫に由来するとされている)、9777番が「エンタープライズ」と命名された。ほか数個の小惑星にも、作品に出演したキャストなどの名前がつけられている。
ニモイ氏が登場する初代シリーズは1966年の製作、放映開始であるが、当時からすでに黒人女性士官ウフーラ(日本版の役名はウラ。ニシェル・ニコルズ)(宇宙船は宇宙艦隊の所属で軍組織のようなクラス分けがされているようだ)が重要ポストに就くなど、差別問題やジェンダーフリーを先駆けて捉えていたのも素晴らしい。もっとも、宇宙というフィールドではMr.スポック(バルカン星人)のように異星人との交流が前提であるので、人種や性差などは些細で取るに足らない問題として乗り越えられているとも考えられる。こういった側面も、人間ドラマとしての深みを増すのに素晴らしい設定として生きている。実際当時の黒人層や女性層はこのテレビで勇気づけられたという。(※例えば、初のアフリカ系アメリカ人女性として宇宙飛行を行ったメイ・ジェミソンは、ウフーラにインスパイアされて宇宙飛行士を目指したという。また、続編の『新スタートレック』などにも出演しているウーピー・ゴールドバーグも、彼女に影響されて女優の道を歩み出したという)
このように実社会への影響や人々の心に様々な感動や力をもたらした稀有な作品の主要キャスト、ミスター・スポックの永眠に心から追悼の意を捧げたいと思います。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)

慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)とは、従来、慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称。タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じた肺の炎症性疾患であり、喫煙習慣を背景に中高年に発症する生活習慣病。患者数は40歳以上の人口の8.6%、約530万人の患者が存在すると推定され、大多数が未診断、未治療の状態であると考えらる。全体では死亡原因の9位、男性では7位を占めていて、決してマイナーな病でも軽く見る病でもない。
最大の原因は喫煙であり、喫煙者の15~20%がCOPDを発症。タバコの煙を吸入することで肺の中の気管支に炎症がおきて、せきやたんが出たり、気管支が細くなることによって空気の流れが低下する。また、気管支が枝分かれした奥にあるぶどうの房状の小さな袋である肺胞(はいほう)が破壊されて、肺気腫という状態になると、酸素の取り込みや二酸化炭素を排出する機能が低下。COPDではこれらの変化が併存していると考えられており、治療によっても元に戻ることはない。再生医療が思い切り進歩しないとどうしようもない病気である。この「元に戻れない」ということは、現在の喫煙者には強く意識して欲しい。

治療

COPDに対する管理の目標は、
(1)症状および生活の質の改善
(2)運動能と身体活動性の向上および維持
(3)増悪の予防
(4)疾患の進行抑制
(5)全身併存症および肺合併症の予防と治療
(6)生命予後の改善

気流のつまり具合だけでなく、症状の程度や増悪の頻度を加味した重症度を総合的に判断したうえで治療法を段階的に増強していくようだ。喫煙を続けると呼吸機能の悪化が加速してしまうので、禁煙が治療の基本。増悪をさけるためには、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種が勧められる。
薬物療法の中心は気管支拡張薬(抗コリン薬・β2刺激薬・テオフィリン薬)。効果や副作用の面から吸入薬が推奨されており、主として長時間気管支を拡張する吸入抗コリン薬や吸入β2刺激薬が使用されている。
気流閉塞が重症で増悪を繰り返す場合は、吸入ステロイド薬を使用。長時間作用性β2刺激薬と吸入用ステロイドの配合薬も有用であることが証明されている。非薬物療法では呼吸リハビリテーション(口すぼめ呼吸や腹式呼吸などの呼吸訓練・運動療法・栄養療法など)が中心。低酸素血症が進行してしまった場合には在宅酸素療法(HOT, Home Oxygen Therapy)が導入される。たまにお年寄りが鼻にチューブをセットし酸素ボンベを引きながら歩いているのを見かけることがあるが、それが在宅酸素療法の一環である。さらに呼吸不全が進行した場合は、小型の人工呼吸器とマスクを用いて呼吸を助ける換気補助療法が行われることもあり、症例によっては過膨張した肺を切除する外科手術(肺容量減少術)が検討されることもあるようだ。
いずれにしても最大原因が明白な病気だけに、特にヘビースモーカーである喫煙者は一度禁煙、断煙について考えたほうがいいだろう。幸い現在では禁煙治療薬に保険が適用される。トライしてもらいたい。