オキシドールで乳がん治療 兵庫の病院長が新手法
神戸新聞NEXT 4月8日(水)
兵庫県立加古川医療センター(加古川市)の小川恭弘(やすひろ)院長(62)が、過酸化水素(オキシドール)を使って効果を高める放射線治療法を開発し、国内外での普及を目指している。効果を妨げる酵素を抑える仕組みで、切除手術が不要なことから、主に乳房が温存できる乳がん治療として広がりつつある。県内でも神戸低侵襲がん医療センター(神戸市中央区)で昨年から開始。今後は臨床試験(治験)を実施し、公的医療保険の適用を目指す。
小川院長によると、がんは大きくなるほど細胞内に抗酸化酵素が増え、酸素が欠乏する。一方、放射線治療は酸素を利用してがんを殺すため、がんが進行するほど効果が低下することが課題だった。 小川院長は前任の高知大教授時代、抗酸化酵素を分解するオキシドールと、オキシドールを患部にとどまらせるヒアルロン酸を注射する「酵素標的・増感放射線療法KORTUC(コータック)」を発案し、2006年から高知大で臨床利用を開始。高知大だけで200例超、全国では計10カ所以上で500例以上実施された。大半は乳がんだが、皮膚や肝臓、膵臓(すいぞう)、腎臓のがんにも利用されている。
小川院長は昨年4月、加古川医療センターに着任。最新の放射線治療機器がある神戸低侵襲がん医療センター(藤井正彦院長)で同11月から乳がん治療を始めた。抗がん剤も併用しながら今年3月までに4人に実施し、「がんが消え体力の消耗も少ない」(40代女性)などと評価されているという。従来の放射線や抗がん剤による治療費に加え、1回数百円の注射計5回分で済む。来年中に加古川医療センターでも始める意向。
神戸大医学部出身の小川院長は「この治療法を世界に発信するため兵庫県に戻ってきた。安価で容易なのでぜひ普及させ、多くの患者を救いたい」と話す。神戸低侵襲がん医療センターTEL078・304・4100(金井恒幸)
【KORTUC(コータック)】
小川恭弘・県立加古川医療センター院長によると、大阪医科大(大阪府高槻市)、長崎県島原病院(長崎県)、東京放射線クリニック(東京都)などで多数の実施例がある。小川院長は日本増感放射線療法KORTUC研究会の会長も務める。
温存療法として放射線治療は従来から行われているが、なるほど従来の治療法にオキシドール、ヒアルロン酸という安価な注射で効果をあげられるというのは、多くの患者に恩恵がもたらされる朗報だろう。ここにはまだ「仁術」としての医療があるようだ。相手ががん細胞だけに、根本的に治療できるというものではないが、治療効果を安全に安価にアップできるのは素晴らしい。巨大医薬品メーカーから研究費を潤沢に与えられて、新薬の普及活動に勤しむ政治屋まがいのビジネス医師とは明らかに人間としての立ち位置が違う。是非普及してもらいたいものだ。
公式サイト◎兵庫県立加古川医療センター(旧兵庫県立加古川病院)
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