時事通信 9月28日(日)16時3分配信
「灰に埋もれて動かなくなっている人を見た」「どうすることもできなかった」。御嶽山山頂で噴火活動に巻き込まれ、9合目の山小屋で一夜を明かした登山者らが28日午前、岐阜県側から下山し、山頂付近での過酷な体験を振り返った。
千葉県松戸市の女性(69)は27日午前、妹や友人と3人で剣ケ峰に登頂。山頂にある社務所のそばで昼食を取ろうとリュックを下ろした瞬間、爆音とともに煙が上がった。噴煙であたりは真っ暗になり、噴石が次々と襲い掛かった。とっさに頭の上に乗せたリュックにも大きな石が当たり、「中の魔法瓶がぺしゃんこにつぶれた」という。
気付くと、膝の下まで火山灰が積もり、体の上に倒れ込んだ登山者2人の重みで身動きが取れなかった。妹らの手を借りて脱出したが、倒れていた2人は動かなくなっていたという。女性は「既に亡くなっているようだった。他に頭に大けがをして出血している人もいたが、どうすることもできなかった」と声を落とした。
女性らは社務所の中に逃げ込んだが、絶えず噴石がぶつかる音が鳴り響き、中には屋根を突き破って落ちてくる石も。女性の妹(65)は「背中を負傷した登山者が板に乗せて運び込まれてきた。最初は『痛い、痛い』と言っていたが、30分ほどして動かなくなった」と語り、「私は社務所に近かったから助かった」と表情をこわばらせた。
時間と共に惨状が明らかになってきている。登山シーズンで人気の御嶽山。週末直前で多くの登山者がいた。識者の解説だと、今回の噴火は予見するのが難しいという。観測によると火山性の微動も少しは高まったが、その後収まりつつあったというし、入山規制を行うことも難しかったようだ。また登山者自身にとっても、仮に御嶽山が活火山だと知っていても、まさかこのタイミング、自身の登山中に噴火するなど誰が想像するだろう?亡くなった方は避けようのない災難にあったわけで、登山のベテランであろうがなかろうが、火山の噴火から身を守るすべなど誰にもあるわけがない。心からご冥福をお祈りします。